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更新日:2018.07.25

「年金をもらえるまで自分は働ける」という過信
あなたは貯金ゼロで大丈夫?

当事者インタビュー:Oさん(男性・62歳)

連続性を持つ人生を歩むためには

最近、当事者インタビューを通じて感じていることがあります。
それは、人生を大きく2つに分けて考えた時、現役生活とその後の引退生活の切れ目が生活困窮の原因になっているのではないかということ。

言いかえれば、60歳の定年から65歳の年金受給までの空白期間をどのようにつないでいくか、例えば以下の溶接の定義と同じく「連続性を持つ一体化された」人生を歩むためには、定年後の継続雇用またはセカンドキャリアを見越した人生設計が必要になるのではないでしょうか。

「溶接とは、2個以上の部材の接合部に、熱又は圧力もしくはその両者を加え、必要があれば適当な溶加材を加えて、接合部が連続性を持つ一体化された1つの部材とする接合方法」(Wikipediaより)

今回の当事者インタビューは30年以上、溶接工として働いた末、腰痛と手足のしびれで仕事を続けることができなくなってしまった高齢男性のお話です。

腰の痛みと手足のしびれで失業

Oさん(男性・62歳)は、高校卒業後に就職した鉄工所で溶接を覚え、その後30歳で本格的な溶接工として転職。61歳の失業まで30年以上の経験をもつ元ベテラン溶接工です。

しゃがみっぱなしで作業をする溶接の仕事。
Oさんは50代になると腰の痛みや手のしびれを感じるようになり、ひどい時にはギックリ腰のように動けなくなりました。

ブロック注射という痛み止めを打って症状がやわらいだこともありましたが、60歳をこえると両足の裏、かかとからふくらはぎ、ももの裏までしびれが走るようになり、雇用主から「もう仕事をやらなくていいよ」と事実上のクビを言い渡されてしまいます。

兄を頼ることができず生活保護を申請

自分でも「これじゃムリだな」と思ったOさん。
雇用形態は正社員ではない業務委託。退職金はもちろん失業保険をもらうことができず、たちまち生活に困窮してしまいます。

当時、ひとり暮らしをしていたアパートの家賃は8万円。貯金はほぼゼロ。
家賃を滞納するようになり、二人の兄に援助を頼みましたが、自分よりも高齢で家族をもつ兄達にOさんを助ける余裕はありませんでした。

困り果てたOさんは、2番目の兄のお嫁さんから「生活保護に頼ってみてはどうか」という話をされ、福祉事務所に相談することにしました。

そして、担当となったケースワーカーに事情を説明し、生活保護を申請。
ぶじに生活保護費を受給することができましたが、その時すでに4か月分の家賃を滞納している状況でした。

家賃滞納で強制執行

生活保護費の住宅扶助について、川崎市で決まっている上限は53,700円。
Oさんのアパートの家賃は80,000円だったため、お金が足りません。
不足分の26,300円は、本来、食費や水道光熱費にあてる生活扶助から賄いました。

残った生活扶助では生活が厳しかったため、家賃の満額を支払うことが徐々にできなくなってしまい、最終的には53,700円だけを家賃として納めていましたが、家賃保証会社から退去の宣告を受けることに。

並行しておこなっていたアパート探しは、保証人の関係で審査が通らないなど、うまくいっておらず、ついには裁判所から立ち退きに関する強制執行の知らせが届きます。

こうしてOさんは、家具や家電を残し、両手の荷物だけをもってそれまで住んできたアパートをあとにすることになったのです。

川崎市内の無料低額宿泊所に入所

住まいを失いかけたOさんでしたが、担当ケースワーカーの事前準備により、ホームレスになることをかろうじて免れます。

Oさんは、それまで暮らしてきたアパートと同じ区内にある「下小田中ハイツ(川崎市内の無料低額宿泊所)」の紹介をうけ、アパートを退去した日のうちから入所することが決まりました。

Oさんが下小田中ハイツに入所してから間もなく3か月。
ひどかった腰の痛みや手足のしびれは収まり、高かった血圧の数値も改善にむかっています。

現在62歳のOさん。担当ケースワーカーからは「働く意思はありますか?」と少なくとも65歳までは就労指導の対象であることを伝えられています。
これに対して、Oさんは、「使ってもらえるところがあれば、できる限りやりたい」と体の様子をみながら仕事をしたいと考えています。

また、同時に「生活保護を打ち切れるものなら打ち切ってみたい」とあくまで「段階を追って」にはなりますが、「ズルズルいかないように国民の義務を果たしたい」と静かに語ってくれました。

貯金と仕事で空白期間を乗り越える

現役引退をハッピーリタイアとするために何が必要かOさんに聞いてみました。
すると答えは「貯え」
これまで貯金をしてこなかったことが生活困窮の原因の1つだといいます。

それから、体調不良を抱えながらも「65歳までは使ってもらえるだろうという考えが甘かった」
「歳をとってからでもできるような仕事やアルバイトを何か探しておけばよかった」

これらのOさんの言葉は、60歳の定年から65歳の年金受給までの空白期間(=切れ目)をつなぐために何が必要かを私達に示唆すると同時に、生活困窮を生み出している社会の課題も示しているのではないでしょうか?

文(聞き手):竹浦史展
取材日:2018.5.24

下小田中ハイツ(無料低額宿泊所・定員76名)

神奈川県川崎市中原区下小田中6-29-5

[お問い合わせ]
NPO法人エスエスエス 神奈川支部
0120-776-799

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#神奈川 #60代 #無年金 #家賃滞納

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