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更新日:2018.01.31

人生を豊かにする「仕事・家族・住まい」
あなたは「あってあたり前」と思っていませんか?

当事者インタビュー:Aさん(男性・60代)

「仕事・家族・住まい」を失った

30年営んだ内装業、
40年ともに歩んだ妻、
50年住んだ自宅。
これらすべてを失った人がAさん(男性・60代)です。

もし、みなさんが「仕事・家族・住まい」を失うことを想像せずに、何気ない日常を送れているとしたら、それだけで幸せと言えるかもしれません。

そして、人生を豊かにするための3大要素とも言えるこれらのうち、どれかを失っていたり、失うおそれがあるとしたら、それは「人生の危機」に直面していると考えてよいでしょう。

ただ、「仕事・家族・住まい」のすべてを失うとしたらどうでしょうか?
なぜそうなったのか?
すぐにイメージするのは、難しいのではないのではないでしょうか。

今回の当事者インタビューは、大卒で内装業を30年自営し、廃業と離婚を経験した男性のお話です。

日本人の住まいに対する好みが変わった

東京23区内の一等地、Aさんが自営していた内装業の事務所を兼ねた自宅を売却することになったのは、経営不振が原因でした。

営んでいたのは内装業。
いわゆる和室に必要な障子やふすま、壁紙の張替えが主な仕事でした。

Aさんは、進学校から有名大学へと進み、卒業した後、地元の工務店で6年かけて修行。独立を果たしました。

そして、独立後、バブル期をはさみ仕事は順調。

しかし、時代が移り変わる中で、「和室から洋室」「畳からフローリング」というように、いつしか日本人の住まいに対する好みが変わっていった結果、Aさんの仕事も減りはじめました。

認識の甘さから競合との争いに敗れる

業績悪化しはじめた当初、何か改善できることがあったかもしれないのですが、バブル期の残像がAさんの判断を誤らせます。
時代の変化を感じながらも、「いずれまた景気が良くなる」
「そうすれば新築工事が増え、仕事も持ち直すだろう」と考え、
「認識が甘かった」と話すAさん。

さらに、Aさんより後に独立し価格競争をしかけてくる若手職人の存在や、大家さんが賃貸物件を管理する不動産事業者に直接注文するようになったことが経営不振に拍車をかけました。

徐々に仕事が減っていく中でも、手抜きをせず、昔ながらの丁寧な仕事をするAさんは競合との争いに敗れ、十数社あった得意先も廃業前には2社だけになっていました。

思い入れのある自宅を売却

仕事が減り経営が苦しくなったAさん。
材料費の支払いなどで作った借金を返済するため、子どもの頃から50年近く住んでいた自宅を売却することに。

両親と暮らし、結婚後は3人の子ども達も含めて3世代で暮らしたこともある自宅。思い入れもあったことから、引っ越しをするのではなく、売却後に住み続けることができるよう賃貸契約を交わすことにしました。

いま思い返せば、それまでの借金を差し引いても残ったまとまったお金。
それを元手に小さなマンションを購入したり、家賃の安い物件に引っ越すことも可能でした。

しかし、もともと「お金に頓着しないタイプ」を自認するAさん。
数百万円のお金を目にすると、「何とかなるだろう」とタカをくくり、具体的な生活設計の見直しをしませんでした。

一家離散へ

傾きかけた経営が上向くことはなく、仕事の減ったAさんは細々と注文を受けながら、同業他社のバイトをしてなんとか生活を維持。
それも長くは続かず、自宅を売却してから2年ほどで「ケツに火がついた」状態となり廃業を選択しました。

そして、再就職することができず、年金の受給権もないAさん。
ついには妻から「生活保護を受けるしかないのでは?」と提案されました。

ところが、妻は自分自身が生活保護を受けることを断固として拒否。
夫婦で暮らすことを断念せざるを得ませんでした。

こうして、パートをしていた妻、成人し就職していた子ども達はそれぞれ別々のアパートへ引っ越し、家族は離散。離婚も成立しました。

各自が精一杯な状況で自分を養ってもらう訳にもいかず、Aさんはひとり生活保護の申請へ。

「今の境遇に甘えたくない」

区役所の生活保護の窓口へ相談したところ、同じ区内にある生活に困窮した人の自立を支援するB荘(東京23区内の無料低額宿泊所)の紹介を受けました。

B荘の利用開始から数か月。
当初は内装業の正社員にこだわって再就職を目指していましたが、年齢を理由に不採用が続き方向を転換。
職種をしぼらずパート・アルバイトを探していたところ、ハローワークで紹介を受けた大手スーパーに採用が決まり、第1回目の試験勤務を終えました。

買物カゴやショッピングカートを整理したり、自転車の誘導をするアルバイト。1日3時間。週2~3回のシフト制です。

このアルバイトをしながら並行して正社員として働ける仕事を探すと決意するAさん。「いまの境遇に甘えたくない」と話します。

「もう一度女房とやり直したい」

それもそのはず、Aさんは生活保護を受ける現在の生活から抜け出し、交際期間も含めて40年間ともに歩んだ元妻と「もう一度やり直したい」という強い意志を持っているのです。

「まじめに仕事をして実績を作れば、女房も分かってくれるんじゃないか」

最後に家を出る時に見つけた結婚指輪。
離婚した今でも、「結婚当時の気持ちに戻ろう」「いつもこれを見て頑張ろう」とあえてAさんはその指輪を左手の薬指にはめています。

「もう一度いっしょに暮らさないか?」

この言葉を元妻に伝えるために、Aさんは前向きな気持ちで自立を目指します。

人生を豊かにするための3大要素とも言える「仕事・家族・住まい」
そのすべてを失うことをあなたはイメージすることができますか?

そして、失わないために何が必要か分かりますか?

文(聞き手):竹浦史展
取材日:2017.10.12

東京23区内 B荘(無料低額宿泊所)

※ご本人の希望により施設名および住所を非公開とさせていただきます。

[お問い合わせ]
NPO法人エスエスエス 東京支部
03-3834-6850

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