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更新日:2019.07.17

QOL(クオリティ・オブ・ライフ)とは何か?
困窮者への日常生活支援の考察

当事者インタビュー:Oさん(男性・81歳)

#東京 #80代 #要介護 #低所得高齢者

自分らしい生活・人間らしい生活とは?

みなさんは「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」という言葉をご存知でしょうか?
この言葉は、生活の質や人生の質のことをさし、「自分らしい生活や人間らしい生活を送ることができ、その人なりの幸福な人生を送っているか」といった尺度・概念を意味します。

また、現在、厚生労働省では、「単独で居住が困難な生活保護受給者に対し、必要な日常生活上の支援を提供する仕組み」を創設するための検討会※1を開催しており、生活困窮など社会的に苦しい立場に置かれる人の生活をどう支えるべきか、そのあり方に注目が集まっています。

今回のコラムでは、1人の高齢男性の例を通して、「その人なりの生活」とはどのようなものか、QOLのとらえ方と日常生活支援について考えてみたいと思います。

※1 社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援の在り方に関する検討会

76歳まで現役の土木作業員

今回、インタビューしたOさん(男性・81歳)。
東京都江戸川区内にある「寄りそい型宿泊所※2 西葛西荘」に入居して3年半が経過しようとしています。
はじめに、名前と年齢を確認すると、「若いやろ」とニコっとしながら返事をしてくれました。

さっそく、Oさんがこれまでどんな生活をしてきたのか尋ねると、「むかしの東京オリンピックの前からずっとだよ」と、10代で東北地方から上京して以来、トンネルや地下鉄の土木作業員として60年以上、働いてきたことを話してくれました。

そして、結婚の経験はなく、長年、工事現場や社員寮でひとり身の暮らし。
脳梗塞で入院した76歳まで現役生活をつづけていたといいます。

※2 低所得高齢者等が本来的な居場所(介護保険施設、ケア付き住まい等)を利用できるようになるまでの間、不安なく居住できるよう無料低額宿泊所を「寄りそい型宿泊所」として機能強化を図る東京都の独自事業。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/seikatsu/shisetsu/shukuhaku/yorisoigatasyukuhakusyojigyou.html

脳梗塞がきっかけで「寄りそい型宿泊所」に入居

そんなOさんが自分の体の異変に気づいたのは2015年の6月末。
「調子が悪い」「体がだるい」と社員寮から歩いて病院にむかったところ、「脳梗塞を起こしている!すぐに入院しないとダメ」と緊急入院することに。

その後、半年ほどのリハビリを経て退院しましたが、左下肢マヒの後遺症が残り、「仕事をやめて生活保護をうけ、西葛西荘へ連れてきてもらった」といいます。

寄りそい型宿泊所である西葛西荘には社会福祉士等の有資格者が配置されており、Oさんは要介護認定をはじめ、各種介護サービスのコーディネイト、入居後に発覚した肺がんの通院治療などに関する支援をうけました。

冗談を言いながら楽しく

現在、Oさんの要介護度は「1」。
施設職員の見守りとサポートをうけつつ、週2回(月・木)のデイサービス、同じく週2回の訪問介護(火・金)を利用し、地域生活を送っています。

Oさんに、「デイサービスに行くのは楽しみですか?」と尋ねると「ぜんぜん楽しくないよ」「ビンゴもやるんだよ!」と景品でもらった手ぬぐいをうれしそうに見せてくれるなど、照れ隠しと満足気な様子が見て取れます。

また、西葛西荘について聞いてみると「みんな人がいいから気に入ってる」「冗談を言える人ばっかりでしょ。おたくら従業員が(笑)」とのこと。
「ぶすっとしてられたら面白くないでしょ」と、どこにいても明るく楽しく過ごすのが「Oさん流」のようです。

「自分のできることは自分でする」

さらに、Oさんにはもう1つの流儀があります。
それは、「自分のできることは自分でする」ということ。
部屋の掃除について例をあげると、ホームヘルパーが片づけを手伝ってくれる日もありますが、普段からモップを使ってベッドの端に腰かけながら部屋の隅まで掃除します。

このほか、服薬とお金は自己管理。歩行器を使いながら洗濯も自分でおこない、食事や排せつも職員によるゆるやかな見守りのもと自立しています。

Oさんが今後の生活をどのように考えているのかについても気になり、「自分がもっと動けなくなったらどうするの?」と質問してみると、「動けなくなったら、老人ホームに入れてくれ」「置いてくれるうちは置いてくれよな」との返答がありました。

QOL向上の第一歩

また、「Oさんにとって、今のここの生活が自分らしく生きられるってことですか?」という最後の質問に「そうだね」と笑顔でこたえ、「車いすには乗りたくない」「だって、自分の自由がきかない。歩けるときは歩けたほうが自由きくでしょ?言いたいことも言えるし(笑)」と続けました。

Oさんは、西葛西荘の周辺を杖を使って散歩しており、自分なりにQOLを意識した生活を送っていることもわかりました。

その人なりの生活や人生の質を意味するQOL。
それは、ほかの誰でもない、本人が主体となるもの。
これから議論が進んでいく困窮者に対する日常生活支援とは何をさすのか?
それは必ずしも専門的な支援だけをさすのではないかもしれません。

あくまで、本人が一生活者として主体的に意思決定することを見守り、それを支えるといったことが基本になるのではないでしょうか。

文(聞き手):竹浦史展 
取材日:2019.5.28

寄りそい型宿泊所 西葛西荘(定員29名)

東京都江戸川区西葛西2-20-2

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