


私が支援スタッフの求人情報を目にして「応募してみよう」と思ったきっかけは、「自身の利益ではなく、人の役に立つ仕事をしたかった」からです。
私は社会に出てからのほとんどを不動産業界に身をおき、おもに分譲マンションの販売を手掛けてきました。最終的にはマンション開発事業で数十億の売上をあげるだけでなく、人事労務や人材教育の責任を負うなど、取締役員として当時の会社経営をけん引していました。
ところが、2008年のリーマンショック以降、不動産業界はもちろん日本経済が低迷。マンション販売が一気に冷え込んだことで、社内の風当たりが急速に強くなり2009年には自主退職を余儀なくされました。

不動産業界をあとにしてから「結果主義」や「お金お金」という価値観をむなしいと感じるようになり、また、「再就職に有利かもしれない」と考えハローワークの職業訓練を利用してキャリアカウンセラーの資格を取得しました。
この資格をいかすことができる転職先を探しはじめ、最初にみつけたのが支援スタッフの求人でした。
「ほかに脇目もふらず応募した」と言いたいところですが、実際は「キャリアカウンセラーとして就職が決まってもパソコンができなければすぐにクビだろう…」と、内心は自分のパソコンスキルに不安があり、選択の余地がなかったというのが正直なところです(笑)

生活に困窮した方に対する自立支援として、生活や転宅のサポートをしていますが、私が特に力を注いでいるのは就労支援です。
私が当初、施設長を務めた施設では定員39名のうち31名(約8割)が清掃や介護、製麺工場等に就労しており、30代~50代といった現役世代だけではなく、65歳以上の高齢者もなんらかの形で働いていました。
中には82歳の方がマンションの清掃業務に採用されたケースもあり、週3日のアルバイトではありますが、生き生きと仕事に通う姿が目に焼き付いています。

――具体的な就労支援の中身はどういったものになるのでしょうか?
入所後1週間~1ヶ月は様子をみる期間になります。この間に生活を見守り、言動から将来にむけての「意欲」や「意思」を読み取るようにしています。
その後、生活保護を申請していた方については、支給決定がなされてから、住民票の異動、マイナンバーの手続き、銀行口座の設定(通帳・キャッシュカード)と進めていき、可能性のある方については年金受給の手続きもサポートします。
これらの手続きが済んできたら、いきなり正社員ではなく、3ヶ月ほどパート・アルバイトを中心に就労先を探し、体が慣れてきたり、能力の高い方に関しては6ヶ月を目安にフルタイムへとステップを踏むよう促しています。

法人としての就労支援としては、『自立支援セミナー』による自己啓発・履歴書添削や『しごと相談ダイヤル』による求人情報の検索、スーツの貸し出し等がありますが、私は新規入所時の心構えを大切にしています。
具体的には、宮沢賢治の『雨ニモマケズ』のフレーズを説明しながら今までを振り返ってもらったり、これからの人生が永遠でないことなどを一緒に考えます。
はじめの頃は手探りでしたが、自分なりに試行錯誤してこの手法に落ち着きました。

こうしたサポートを通じて、だいたい7割くらいの方は内容や趣旨に一定程度の理解を示します。また、中には涙を流すような方までいらっしゃいます。
一方、残り3割の方については、「言ってる意味がわからない」といった反応で、キャリアカウンセラーとしては不合格かもしれませんが、生活保護の担当ケースワーカーと三者面談を実施するなど、傾聴・気づきではなく指示・指導的な就労支援になっているかもしれません。
やはり人間ですから「働きたくない」「面倒なことはしたくない」といった願望もあるでしょう。
そうした方に私自身も感じている「働くよろこび」や人に奉仕することで生まれる「生きがい」を味わってもらい、最終的には「自分の人生はよい人生だった」と言ってもらえるような支援を今後も心がけていきたいと思っています。
1955年1月生まれ
趣味は夫婦での食べ歩き・旅行。
現在は埼玉県内の自立支援施設で活躍中。
※以上のコンテンツは、過去のインタビューをもとに加筆修正したものになります。